ムラノガラス デザイン

ヴェネチアンガラス デザイン

1800年代半ばから1900年代半ばにかけて商業用ガラス製造が完全に姿を消す中、復活し、繁栄したのは高級ムラノガラス製品の製造でした。ムラノガラスの巨匠もデザイナーも、ムラノガラスを使ったモダンなオブジェの可能性に互いに触発されていきました。

20世紀に入り、伝統を重んじてきたガラス職人は、古い伝統を重視しつつも技巧を改善し、現代の流行に合う作品を製造し始めました。古典的な意匠を維持してきたムラノ島のガラス職人たちは、現代アートの要素をガラスに取り入れるようになりました。数世紀にわたってつちかわれてきた伝統的な技術を基に、新たな芸術を開拓した職人たちのガラス作品は、モダンで、オリジナル性があり、ヴェネチアンガラスの名声をさらに高めることになりました。

1921年、モダンなデザインのムラノガラスを製造する最初の『ヴェニーニ』社がオープンしました。その後、多くの古いガラス工房や工場が、純粋に職人的なムラノガラス生産から、20世紀のムラノを代表する前衛デザイナーとのコラボレーションによるデザイナーズガラス製品の生産へと移行して行きました。1982年には、ヴェネチアにおけるガラス生産について最初に触れた982年の古文書から1千年が経過したことを祝って祝典が開催されました。

現代のムラノガラス

今日、ムラノ島のガラス作品は、小さな吹きガラスのジュエリーや洗練された大きなシャンデリアなど、高級品として高く評価されています。ルネッサンス期に先祖代々受け継がれてきた古典的なスタイルから、デザイン時代のすっきりとしたライン、イゴール・バルビやマッシミリアーノ・カルデローネのような大胆な現代彫刻まで、ムラノのガラス職人たちはさまざまなガラス製品を作り続けています。ムラノ島では、瓶のような安価に生産しやすい実用品の商業生産はもはや行われず、900年以上にわたって培われた技術や技能が、現代の芸術的ビジョン、そしてもちろん変化し続ける人々の好みと融合し、常に新しく、より美しいデザインのムラーノガラスを生み出しているのです。

現代において、ムラノグラスの巨匠たちは、過去にムラノの巨匠たちが発明した有名な形やスタイルのガラス細工を模倣して作られたガラスの大量生産という商業的脅威に直面しています。これらの製品は低価格で生産されるため、本物のムラーノガラスよりも低価格で販売することも可能である。しかし、ルネッサンス期にボヘミアン・クリスタルとの競争にさらされ、ハプスブルク家の弾圧から立ち直るのが難しかったように、ムラノのガラス職人たちは、よりオリジナルでユニークで美しいムラノガラスを作ることでこの挑戦に応えています。

毎年パリで開催される見本市『メゾン・エ・オブジェ(MAISON & OBJET)』に、ヴェネチアンガラスの工房もが毎年参加しています。国際的にも知名度が高いこの見本市では、ヴェネチアングラスは常に称賛の的で、高い技術だけではなく芸術性も評価されてきました。見本市には食器、家具、昭明、彫刻などインテリアの商品が数多く展示され、ムラノ島だけではなくヴェネト州の行政も、これまでこの見本市への参加を後押ししてきました。

参加する工房は、エルコレ・モレッティ(ERCOLE MORETTI)、フラテッリ・トーゾ(Fratelli Toso)、ナゾン・モレッティ(Nason Moretti)、セグーゾ・ジャンニ(Seguso Gianni)、ティオッツォ・セルジオ(Tiozzo Sergio di Claudio Tiozzo)など、一流の商品を生み出す工房で、いずれも伝統的な意匠にこだわらず、モダンなインテリアにも合うような近代的な作品が出品されています。

【NASON MORETTI】ナゾン・モレッティ 

 https://www.nasonmoretti.com  

ムラノ島の芸術的なガラス地区の中心部にある『ナゾン・モレッティ社』の職人技術と現代性 は、1923年に創立され、ムラノ島では、有名な歴史ある大手のガラス工場です。

1920年代は、イタリアの視覚芸術が大きな成功を収めていた時期でした。創業以来、同社は革新的な企業であることを証明してきました。コレクショングラスや歴史的な聖杯ガラスは、イタリア国内外にその名声を広め、花瓶やデザインオブジェとともに、ヴェネチアの「テーブルアート」のクオリティーの高さが認証されました。

1955 年、ナゾン・モレッティは名誉ある『コンパッソ ドーロ賞(金のコンパス賞)』を受賞しました。この賞は、ジオ・ポンティによって、当時転換期だったイタリア デザインの価値と品質を評価する意図で、 1 年前に創設されました。ウンベルト・ナゾンがデザインした「リディア・ボウル」がこの賞を受賞しました。この素晴らしいコレクションは、反転したオーバーレイガラス(内側はカラーガラス、外側は乳白ガラス)の技術を、当時としては革新的なガラスデザインで製造しました。

ムラノ島のガラスがまだバロック様式を特徴としていた1960年代、ナゾン家の 2 世代目は新しいガラス製品の実験的な意欲のもと、製品を最大限の発展に導きました。 90 年代に誕生した 3 代目 (ピエロ、マルコ、ジョルジョ は現在も経営を続けています) とともに、その活動はアートとデザインの世界からのトレンドと影響を組み合わせた革新的なコレクションに焦点を当てており、『ナゾン・モレッティ社』は重要なファッションブランドや高級ブランドとの多くのコラボレーション、有名な国際ショーや見本市への出展などを実現してきました。

『ナゾン・モレッティ ミュージアム』見学コース 

 2019年にオープンした『ナゾン・モレッティ ミュージアム』は、創立100 周年の歴史を記念して企画されました。ナゾン モレッティ独自のスタイル、カラー、質感の進化を強調する空間に出来上がりました。資料の中には、ナゾン一族の歴史に関する文書から、世界で有名なデザイナーやアーティストとのコラボレーションした資料なども紹介されています。また、2023年で100周年をむかえ、ムラノ島のガラス 博物館で展示会が行われています。

見学コースは、ショールームの見学から始まり、 生産工程が始まる研究室で、ナゾン・モレッティ独自のスタイルとカラーを作り上げる基礎となる材料室にご案内します。ガラス のカラーは、古代の秘伝のレシピに従ってさまざまな色合いのガラスを作ります。

その後、工場の製造過程にご紹介します。5 つの炉と 5 人の職人が各自の作業内容によって配置され、伝統または現代的な形状のガラス、様々なサイズのガラス 、透明またはカラーガラスが、伝統的なガラスの技法で製造されている様子を見学できます。

職人による製造が終了すると、冷却炉で時間をかけて冷やします。各ガラス 製品の切り込みの表面を研磨で磨き上げ、砂彫りの技術を用いて、すべてのアイテムに商標を刻印します。仕上げが終了したのち、コントロールを行い、完璧に出来上がった製品のみが梱包されます。

※  島巡り(8時間コース)のオプショナルで、ご希望の方には『ナゾン・モレッティ ミュージアム』にご案内しています。

普段は一般に公開していない『ナゾン・モレッティ』社の『ナゾン・モレッティ ミュージアム』の見学コースは、大変貴重な機会となります。予約制でプライベートに訪問しながら、ご案内します。【90分】1人3000円