ヴェネチア 高潮情報

ヴェネチアの高潮は、通常9月から4月までが高潮の時期とされています。
ただし、近年は気候変動の影響で、5月から8月にも、サンマルコ広場が、浸水している光景を見る回数が増えてきました。高潮はヴェネチアの島全体を同一に浸水させるわけではなく、各地域で海面からの高さの違い、島全体に張り巡らされている運河からの距離、浸水の原因ともされている下水道や排水設備の配置など、様々な要因で浸水の状態が異なります。

通常、高潮は6時間で増加して、その後の6時間で減少する潮のサイクルに従います。高潮の時期は上昇時間のみ島内は浸水します。例外的な高潮現象のピークが予想されると、ヴェネチアの潮の観測センターの情報サービスの音響警告によって警告されます。通常高潮は上昇してから低下するまで約3〜4時間続きます。島内は歩道なので、街は常に通行可能です。水位が低下すると、都市は通常の状態に戻ります。
潮位を測定するときは、プンタ・デッラ・サルー​​テ(サルーテ教会近く)の験潮儀(海面の昇降を測定し、測定結果を連続記録する器械)のゼロレベルを基準として使用します。島全体(97%)が海水面から測った陸地の高さ平均海抜100 cmです。これは歩道に浸水する潮の量が近年起きる高潮現象の高さを下回っています。例えば、140cmという例外的な高潮場合、島の最下地点サン・マルコ広場は約60cm浸水することになり、島内の歴史的中心部の約54%が浸水することになります。通常の潮位より潮位 90cmまでの高潮の場合、海面からの高さが低い地域や排水設備が近い場所は浸水しやすいですが、それらの場所を避ければ、通常通り歩けます。ただし、90cm以上になってくると、浸水している地域も増えてきます。通常の潮位より潮位 120cm以上になると、島の約1/3が浸水します。

実際、浸水した場合の対処法は、長靴を履くか、浸水しやすい場所に並べられている足場を歩くかです。足場は全ての浸水している場所に設置してあるわけではありません。長靴を履いて移動することが最も便利です。長靴は、一時的な対処として、靴から膝下までを覆う長靴式レインコートのようなものが、街中のお土産物屋やタバコ屋で6〜10ユーロで売られています。

島内のプンタ・デッラ・サルー​​テ(サルーテ教会近く)にある潮の高さを測る験潮儀で計測される下記のデータが基準になっています。潮位監視予報センターでは、海洋データや気象データを分析して正確な予測を出しています。通常48時間前からの予報も出されていますが、正確なのは48時間内とされています。
通常の潮位:- 50〜79cm
イエロー・レベル  通常の潮位より 潮位 80〜109cm 上昇
オレンジ・レベル  通常の潮位より 潮位 110〜139cm 上昇
レッド・レベル   通常の潮位より 潮位 140cm 以上 上昇

高潮警報:110cm以上になる場合、4段階に分かれてサイレンが鳴ります。サイレンを理解するには、音を数えることで理解できます。サイレンは何度か繰り返して鳴ります。
・110 cm : 一音が同音で長引く
・120 cm : 二音が高音になっていく
・130 cm : 三音が高音になっていく
・140 cm 以上 : 四音が高音になっていく

高潮の頻度
通常、水位が80〜109 cmのときは「持続的な潮」、110〜139 cmのときは「非常に強い潮」、140 cmを超える時は「例外的な満潮」のことを言います。ヴェネツィア市の潮予報・報告センター(CPSM)によると、「持続的な潮」80〜109 cmで、既に島の最下地点サン・マルコ広場の歩行者の交通に問題が発生する高さとなり、すでに述べたとり「例外的な満潮」140 cmを超えると、島内の歴史的中心部54%が浸水します。

潮の観測センター(CPSM)サイトでは、1983年にセンターが設立される前に存在していたさまざまな情報源から推定された1872年からのヴェネツィアの高潮に関するデータによると、歴史的に、110センチのレベルを超える満潮はかなり稀でしたが、過去50〜60年で激化しました。1870年から1949年の間に、110cmを超満潮が30回記録されました。潮が110 cmを超える日数が最も多かったのは2009年と2010年で、どちらも14日でした。次に2014年は13日でした。2018年には、7日しかありませんでした。 データでは、140cmを超える潮に関しては、2000年までに120年以上で平均9年しか例外的な高潮は発生しませんでした。

潮予報・報告センター(CPSM)は電話サービス、新聞、掲示板、水上バスの乗り場などを通して高潮情報を伝達します。ヴェネチア市のサイトからも、登録すればメールや携帯に高潮情報のメッセージが送信されます。また、潮状況アプリ(hi!tideVenezia )を携帯にダウンロードして、ヴェネチアの島各地域の浸水状況も確認できます。一方で、高齢者はネットや携帯を使いこなせない方々もいるので、市に登録すれば、自動的にコンピュータで携帯電話に連絡が入るようになっています。イタリアも日本同様に高齢化が進み、人口の22%以上が高齢者と言われています。特にヴェネチアの島は高齢者の住民が多い地域です。そんな中で、高齢者にむけの有効なシステムが取り入られるようにもなりました。

気候変動と地盤沈下
ISPRAのデータ(高等環境保護研究所)によると、1872年から2016年の間に、ヴェネツィアの海面は年に2.5 mmの割合で、ほぼ35 cm成長しました。数人の気候学者と科学者は、このヴェネツィアの海の上昇の原因の一部は、地球温暖化によって生じた地球最大の氷塊である南極氷床の氷の融解に起因すると指摘しました。この現象は、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)「地球温暖化を研究する国連の科学者および専門家」による最近の報告によって確認されています。

海面の上昇(ユースタティズムと呼ばれる現象)には、「地盤沈下の現象」の説明を付け加える必要があります。「地盤沈下の現象」は「自然と人為的原因による土壌の沈下」に起因することを潮予報・報告センター(CPSM)は指摘します。この人為的なマルゲーラ工業地帯で集中的に行われた地下水の排出が原因で1950年から1970年の間にヴェネツィアの地面が12 cm低くなりました。こうした様々な理由から、ヴェネツィアは高潮の定期的な島の浸水を防ぐ方法を長い間研究してきました。その結果「モーゼ計画」の工事が始まりました。高潮対策は110センチメートルの制限値をが目処です。 「モーゼ計画」の建設は16年前に始まりましたが、大きな遅れと予期せぬ出来事が原因で、操業開始は2021年の終わりとされています。

政府から財政援助
2019年11月12日に起きたヴェネチア高潮異常事態緊急事態に対して、コンテ首相とデ・ミケリ大臣と市民保護長ボレッリは、市の機能を再開するために、変電室、船着場、浮き桟橋を支える台船など早急な対応を行い、十分でなければさらなる配分を約束しました。ヴェネチア人達の間では、政治家のヴェネチア訪問に対して、ある種の不快感を感じました。11月13日には、コンテ首相とデ・ミケリ大臣、14日にはベルルスコーニ、15日にはサルヴィーニ、フランチェスキーニ、その他の政治家たちが続々と訪問しました。それらはまるで高潮の際に一時的に並べられる足場「パッセレッレ」のようではないか、と。財政援助には、当時家族対応に最大5,000ユーロ、会社対応に最大20,000ユーロの援助を行う見積もりを発表しました。そしてコンテ首相は、モーゼ計画を「2021年春に完成させれるであろう」と述べました。閣僚会議では、非常事態に対して「被害にあった全ての市民や会社は、損害を証明する資料(写真、ビデオ、文書など)を提出」と宣言しました。損害の最初の見積もりは約10億ユーロで、高潮が落ち着いて、住宅、会社、店舗、文化的・芸術的遺産への水害を正確に理解することになりました。

ヴェネチア現状
世界の観光都市ヴェネチアでは、観光が主要な資源です。観光客を相手に仕事に携わっている人がほとんどです。お店やレストランを運営する人、ホテルや民泊、B&Bなどの宿泊施設を運営する人、それぞれの職業で、1階にお店や施設を構えている人々が被害にあいました。近年、ヴェネチアの住民の間でオーバートゥーリズムを原因とした様々な批判が上がっていても、観光はヴェネチアの経済維持には欠かせません。2019年11月の重なる高潮の惨事が世界中から注目をあびる中、観光客は大幅に減少しました。

モーゼ計画とは
モーゼ計画は、電気機械実験モジュールの頭字語(MO.S.E.:MOdulo Sperimentale Elettromeccanico)であり、高潮の問題からヴェネチアを救うために考案されたプロジェクトです。最長29mの独立した78個の可動式ゲートからなる「可動式ダム」のシステムで、ラグーン開口部(リド2つ、マラモッコ、キオッジャ)の海底に配置されます。潮が110cmに達したときに、この可動式ゲートが海底から上昇してラグーンと海の開口部の海水の流入をせき止める「可動式ダム」となる構想です。モーゼ計画では、この可動式ゲートで高さ3mまでの潮からヴェネツィアとラグーンを保護し、今後100年間で最大60cmの海面上昇から保護することを計画していました。※モーゼ計画については、別のリンクで詳しく説明させていただきます。

2019年11月12日 ヴェネチア高潮異常事態
過去にもヴェネチア高潮のニュースが世界に報道され続けてきましたが、史上第二の高潮を記録した2019年11月12日の高潮異常事態のヴェネチア高潮の場面が世界各国で報道されました。2019年11月12日は、1966年の最高記録194cmの高潮に次ぐレベル187cmまで上昇しました。高潮は数時間かけて安定したペースで 10分ごとに3、4、5cmと上昇しました。

2019年11月12日22時50分、プンタ・デッラ・サルー​​テ(サルーテ教会近く)の験潮儀は、53年前の1966年大惨事の記録よりも7cm低い187cmを記録しました。 ヴェネツィアと海を分けるペレストリーナ島では2人の死者が出ました。78歳の高齢者が感電死しました。高齢者の死を引き起こした原因は家に入った海水によって起きた感電死でした。もう一名も高齢者は激しい嵐の環境の中で、自然死が原因と想定されました。時速120kmの突風によって荒れたアドリア海は、ペレストリーナ島からヴェネチアの島にまで襲いかかり、1階に位置するお店、レストラン、バー・カフェから倉庫や住宅は水に浸かり、街中にでゴミからバー、カフェのテーブルと椅子は水に浮かびました。大型公共の水上バスや100人以上乗船できる観光客用の大型船が高潮と強風が原因して沈没または破損しました。

187cmの高潮で、被害が最もひどかったペレストリーナ島から、大惨事は始まりました。今日ペレストリーナ島がなければ、ヴェネチアの島々は数百年もの間存在し続けなかったであろうとも言われています。ヴェネツィアの島々を高潮から守っているのペレストリーナ島は、長さは11kmで、アドリア海側には18世紀に建設された高さ5フィート(1.524m)堤防があり、アドリア海側とラグーン側の両方で保護されています。11月12日の夜、高潮に襲われ、約3,717人の人々が住むペレストリーナ島全体が24時間で浸水しました。ペレストリーナ島は、車、ボート、そして多くの家、家電製品が水に浸かる大参事となりました。

「モーゼ計画の可動式ゲートの93%の準備が整っていることになっているはずが、なぜこんなことが起こったのだろうか。なぜイタリア政府はモーゼ計画の可動式ゲートを稼働させて高潮をせき止めて、この悲劇を避けることはできなかったのか?」住民は質問を問いかけます。「モーゼ計画の可動式ゲートで、アドリア海に面した開口部が閉鎖されれば、ペレストリーナ島は浸水しなかった」と専門家は指摘しました。ペレストリーナ島を高潮から守るには、アドリア海に面した開口部を閉じる以外に解決策はありません。ラグーンを海から隔離する必要があります。ただし、可動式ゲートを稼働させ、運用を開始する前に、解決しなければならない問題があり、時間の経過と共にその問題がさらに延期されてきました。それゆえ、2019年11月12日の段階で稼働は不可能でした。モーゼ計画の完成が2021年と言われていますが、実際モーゼ計画が実践されても、さらに高額な維持費の問題もあります。
11月12日に襲った187cmの異常な高潮の後、ヴェネチアのシンボルであるサン・マルコ寺院の大被害、住宅やホテルなどの多くの建物も被害を受け、フェリーやモーターボートが沈没しました。市政はヴェネト州に、そしてイタリア政府に危機状態の要求を提示しました。