フェニーチェ劇場

オペラは16世紀の終わりに、フィレンツェの貴族のサロンで誕生したと言われています。そしてイタリア各地でオペラが流行し、作曲されるようになりました。その中でも、ヴェネチアは東方貿易で富を蓄えた貴族や市民たちが力を持ち、当時ヨーロッパでも、経済的に豊かで、政治的権力のあるヴェネチア共和国は独自の文化を誇っていました。ヴェネチアで記録上最古のオペラは総督モチェニーゴ・ダンドロ(現在 ホテルダニエリ)の邸宅で行われました。

17世紀、ヴェネチアでは貴族が私的な劇場を市民に開放していました。このシステムは世界最初のオペラ劇場と言われています。その劇場は1637年発足したサン・カッシアーノ劇場です。ヴェネチア貴族が劇場を運営し、芸術フォームとしてオペラを確立する上で決定的な要因の一つとなりました。当時、ヴェネチア共和国ではオペラ劇場など、貴族のみが通える、手の届かない場所と思われていた貧しい階級の市民にオペラを開放し、王族や貴族の排他性からオペラを解放させました。そして、一般市民でもチケットさえ購入すればオペラを楽しむことが出来るようになりました。

17世紀の終わりには、世界のオペラの首都となり、ヴェネチアには多くの新しいオペラ劇場が開かれました。貴族たちは次々に新しい 劇場建設に力を注ぎ、豪華な舞台装置や機械仕掛けも評判になり、17世紀末まで少なくとも17の劇場で388本ものオペラが上演されたことが資料に残っています。

フェニーチェ劇場は1792年に建てられました。「フェニーチェ」はイタリア語で「不死鳥」を意味します。この名前は1773年に火災で焼失した他の歌劇場の後継として建てられ、その劇場のように火災等に遭わない「不死鳥のような劇場に」と言う祈りを込めて名付けられました。皮肉にも2回(1836年と1996年)の火災に遭い、再建されてきました。

長い歴史の中で、フェニーチェ歌劇場は、積極的に新しいオペラを次々に上演し、オペラ史に残る多くの名作が誕生しました。
初演作品は、ヴェルディの「リゴレット」(1851年)、 「椿姫」(1853年)などの5作品をはじめ、ロッシーニ、ベッリーニ、ドニゼッティなどイタリア・オペラの数々初演が行われました。当時にしては珍しい、ストラヴィンスキーの現代作品も積極的に初演が行われました。フェニーチェ歌劇場の舞台に立った歌手は、マリア・カラス、ルチャーノ・パヴァロッティをはじめ、世界的に有名なオペラ歌手達が多数出演してきました。

2度の火災に遭いながらも、入念で、厳格な改装工事のおかげで、当時のフェニーチェ劇場が生き返り、今日も世界中の多くのオペラファンを魅了しています。クラシックなオペラ上演だけにとらわれず、脚本を終了していずに上演できなかったオペラを完成させて上演したり、長編のオペラを短縮して上演したり、毎年様々な試みが行われ、クラシックなオペラと個性的なオペラの上演を楽しめる劇場であります。一方で、クラシックのコンサートも行っています。