ピエモンテ州の食文化

<ピエモンテ州の食文化>

スローフードの発祥地として有名で、お米、白トリュフ、赤ワイン、チーズ、ブランド牛ファッソーネ飼育の産地でもあります。ピエモンテ料理は、サヴォイア家がトリノに首都を構えた際に持ち込んだフランス宮廷料理から影響を受けたものから、ピエモンテならではの料理ブランド牛ファッソーネの生肉をきざんだバットゥータ、仔牛の薄切りとツナのソースを合わせたヴィテッロ・トンナート、アンチョビ、ニンニク、オリーブ・オイルを温めたディップソースに生野菜スティックを浸して食べるバーニャカウダ、卵で練った四角い手打ち生地2枚を上下詰め物を挟んで閉じたアニョロッティパスタにバター、サルビア、グラナパダーナソースのアニョロッティ・デル・プリン、高級ワインバローロを使った煮込み料理ブラザートなどがあります。伝統的に使われてきた食材は肉と野菜、バターやチーズなどの乳製品が中心となっています。 魚介類はほとんど使われず、ジビエやキノコ、トリュフといった山の幸がメインとなります。
州都トリノから50km南下するとブラBraという街があります。ブラは、地元の伝統的食文化や食材を見直す「スローフード運動」発祥の地であり、いまや世界132カ国に10万人以上のメンバーが所属する「スローフード協会」の本部が置かれています。同協会のイニシアティブで、2004年創立の『食科学大学』は「食」全般を学ぶことができるユニークな大学で、世界中から生徒が集まってきています。

※ D.O.P.(Denominazione di Origine Protetta)認定は、EU法に準拠したイタリア国内原産地名称保護制度のことです。対象食品はチーズ、ハム、ソーセージ、オリーブ、ビール、パン、穀物、果物、野菜などです。D.O.P.認定食品は、地域特有の優れた品質の製品であることを示しています。同じ食材の中でも、より品質が優れた保証を示す食品よなります。

<お米の産地>

パスタ同様に、実はお米もイタリアの食卓に欠かせない食材です。お米はピエモンテ州、ロンバルディア州 、ヴェネト州の境、またトスカーナやサルデーニャ島の一部の地域でも生産されています。13~14世紀頃、イタリアの稲作は始まり、お米は主にリゾット料理で、米の自給率は100%で、全生産量の50%がイタリア国内で消費し、残りの50%は主にヨーロッパに輸出しています。
北イタリアのロンバルティア州東側とピエモンテ州西側のアルプスから雪解け水が流れ込む湿地帯で、平坦な地域に水田が集中しています。稲の作付面積は25万haで、主なお米の品種はアルボリオArborio、バルド Baldo、バリッラBalilla、カルナローリCarnaroli、S. Andrea サンタンドレアなどがあります。伝統的米品種のバラッジャ米BaraggiaはDOP認定を受けています。
ピエモンテ州のお米の産地ヴェルチェッリ県は有名で、2つの地域に分かれ、北部はモンテ・ローザから流れるセージア川の上流部にあたり、南部が県都ヴェルチェッリの周辺に広がる平野部で水田が多く、川から水が入ってきます。まるで日本のように見渡す限りの水田風景が広がっています。1945年に開発協力者の一人Carnaroli氏の名前にちなんで2種類の品種を掛け合わせで生まれた最高品質のカルナローリ米は、イタリアで一般的に使われる他の品種に比べ、粒が長くて質感は固め、澱粉を多く含み、長い調理も耐えるのが特徴です。リゾットのほか、サラダやドルチェ(デザート)にも使われています。

<白トリュフ>

ピエモンテ統一前18世紀、ピエモンテとサヴォイア公国は白トリュフを有名にするための重要な役割を担っていました。白トリュフはパーティーで供され、18世紀の食の論文や料理本でトリュフが頻繁に登場しますが、正確な種名は当時知られていずに、科学的な好奇心がトリュフの研究を進めてきました。トリュフを犬で探すというアイデアは当時の宮廷の外国人大使たちを惹きつけ、人々は白トリュフはよその国でも育つのだろうかと思い始めました。18世紀に高級食材として白トリュフ探しが貴族の遊びとして流行し、初代国王となるサヴォイア家が、各国の大使や要人を招き、接待を兼ねた白トリュフ探しをはじめたのがきっかけと言われています。ロッシーニは「キノコのモーツァルト」と讃え、バイロンは「その香りが創造力を掻立てる」と言い白トリュフを書斎の机に常備させたというエピソードが残っています。その背景には一人の仕掛人が存在し、ホテルマンだったジャコモ・モッラと言う人物で、 地域の特産物を売りに観光客を呼び込めないだろうか、という斬新な発想から、バローロやバルバレスコなど、ピエモンテを代表する赤ワインが主役だった見本市の片隅で彼が初めて1929年に白トリュフを出展し、その数年後、ワインは脇役となり、白トリュフは見事に見本市の主役となったそうです。
ジャコモ・モッラの次の戦略は、その年に採れた最高級の白トリュフをVIPにプレゼント1949年のリタ・ヘイワースを皮切りに、トゥルーマン(1951年)、チャーチル(1953年)、マリリン・モンロー(1954年)、アイゼンハワー(1959年)、パウロ6世(1965年)と続き、その後もソフィア・ローレンやヒッチコック、レーガン、ゴルバチョフ、パヴァロッティと、VIPへのプレゼントは引き継がれていったそうです。ジャコモ・モッラがオープンしたトリュフ専門店「タルトゥーフィ・モッラ」は今日も営業してます。

世界中の美食家が心酔する 世界的な祭典「白トリュフ祭」が、白トリュフの産地アルバで、通常10月から11月頃開催されます。白トリュフの競売ほか、様々なイベントが行われます。黒トリュフよりも更に鮮烈な香りで、自生のために希少性も高く、お値段も数倍以上するのが白トリュフです。採取してから香りが飛ぶのが早いため、鮮度が命と言われています。ピエモンテ州のアルバは、世界的にも白トリュフの一大生産地。アルバ市街地にある展示会場で行われます。展示会場で売買されているのは、トリュフだけではありません。展示会場では、周辺のワイン産地のバローロやバルバレスコ、スプマンテのアスティなどの売買され、白トリュフの試食と共に試飲ができます。

<ブランド牛ファッソーネ>

ピエモンテ州のブランド牛ファソーネは、イタリアで最も重要な原産品種で、中型で白い毛皮を持つ、飼育日数が12カ月から24カ月の仔牛で、肉質の特徴は脂肪含有量が少なく、それでいて柔らかいことです。
フランス語のFaçonファソン=意味「流儀、振舞」から由来するピエモンテの品種の「ファソン」は、最高レベルの肉を生産しています。柔らかく、脂身が少なく、低脂肪でも、栄養価が優れており ほとんどの魚に見られるレベルを超えないくらいのコレステロールです。
一般的に脂肪が多ければ多いほど、柔らかくなりますが、この理論はファッソーネ肉には当てはまりません。脂肪3%未満のカット肉は、他の品種の脂肪7%を超えるカットよりも柔らかいことが証明されています。
飼育後、牛乳を搾ってピエモンテ州の典型的なチーズを製造し、最後に最高品質の肉のみを食肉にします。現在、イタリアで消費される肉の6%のみが、イタリアで生まれた原産肉種と同種または類似の要件を持つ牛に由来していると推定されています。ファッソーネはそうした伝統を継承している貴重な牛肉なのです。
ピエモンテ州の郷土料理の前菜『ファッソーネ牛のタタキBattuta di Fassone al Coltello』は、日本で言えば焼肉屋のユッケで、違うのは「さし(脂肪)」が無い点と味付けです。
イタリアの食文化では、日本ように霜降りなどの「さし(脂肪)」を楽しむ肉文化はありません。 本来、牛の飼料に違いがあり、和牛のように飼料に穀類を食べず、イタリア牛は草を食べるため、草を分解する酵素が体内にあり、独特の臭みを発し、その酵素は脂溶性であるため、「さし(脂肪)」の部分にその臭みが蓄積され、臭みが感じられるその「さし(脂肪)」の部分を生育の段階で極力少なくします。
それゆえ、イタリアでは赤身肉を炭火焼きにしてジューシーさの味覚を、または生でその新鮮さを味わう食文化が根付いてきました。
この『ファッソーネ牛のタタキ』は、赤肉のみを使用しているため、生臭さや臭みは全く感じられません。味付けはシンプルにオリーブオイル・塩・胡椒で仕上げて、赤身の美味しさをたっぷりと堪能できます。

<ピエモンテ州のチーズ> 

イタリアを代表するチーズの一つゴルゴンゾーラGorgonzola DOPの名前の由来は、ロンバルディア州の平野のゴルゴンゾーラ村の名前が由来でしたが、現在この地域では製造されていず、ロンバルディア州とピエモンテ州にまたがる地域で生産されています。ピエモンテ州のノバラ県では多くのゴルゴンゾーラが生産されています。
イタリアを代表するハードチーズのひとつですが、パルミジャーノ・レッジャーノの影に隠れて意外と知られていないグラナ・パダーナGrana Padano DOPも製造されています。
その他、ピエモンテ州産地チーズで最も有名なチーズトーマToma DOPから、トーマ・タレッジョToma Taleggio DOP、ブラBra とカステルマーニョCastelmagno DOP、ラスケーラRaschera DOP、ロッカヴェラーノRoccaveranoDOP、ムラッザーノMurazzano DOPなどのチーズがあります。

ゴルゴンゾーラ Gorgonzola DOP
ゴルゴンゾーラ村は昔、夏のアルプスに放牧していた牛を追い下げてくる中継点で、長旅の疲れを癒すために牛たちが休憩した時に搾ったミルクで作ったやわらかなチーズが評判になり、これを"ストラッキーノ・ディ・ゴルゴンゾーラ"と呼ばれたのが初めといわれています。ストラッキーノはロンバルディア言語で「疲れている」という意味で、ゴルゴンゾーラのねっとりとしたチーズを形容しています。

薄黄色のやわらかなチーズに青カビが筋状に入っていて、なめらかでほどよい青カビの刺激があります。温めたミルクに乳酸菌を加えた後にレンネット(凝乳酵素)を加えます。カゼイン(主な乳たんぱく質)が凝固したもの(凝乳)からホエイ(乳清)を除去したものをカードと言い、ゴルゴンゾーラはこのカードに青カビを加えて成型します。その後、穴を開けて青カビが均一に成長するようにします。
ゴルゴンゾーラは、青カビチーズ としては比較的やわらかい風味で、塩分も控えめ、青カビ独特のクセが少ないチーズです。ドルチェ(dolce=甘い)と、ピカンテ(piccante=辛い)の2種類作られています。
ドルチェタイプは、青カビが少なくクリーミーな口当たりでマイルド、青カビタイプの初心者にも食べやすいと人気があります。

グラナ・パダーナGrana Padano DOP
「グラナ」は粉状におろして使うチーズの総称で「パダーノ」は生産地であるパダーナ平野からきています。グラナ・パダーノは、DOP(原産地名称保護)も取得している品質の高いチーズで、さらにDOPチーズの中でナンバー1の生産量です。グラナ・パダーノの産地はポー川流域のパダーナ平野の30県以上です(パルミジャーノの産地は5県のみ)両チーズの大きな違いは熟成期間、生産地、一日の製造回数、リゾチームの添加の有無です。甘く華やかな香りと濃厚すぎないミルクの甘みと旨味を感じるマイルドなハードチーズで、パルミジャーノ・レッジャーノに比べて味わいはやさしくマイルドで食べやすく、値段も安く、庶民的で身近なチーズとも言えます。粉状にすりおろす以外にも、薄くスライスしてカルパッチョやサラダに添える食べ方から、割ってそのまま食べても美味しく、濃いめの白ワインや赤ワイン全般と相性がいいです。

トーマ Toma DOP
アルプスの牧場で誕生して、何世紀もの間に徐々に谷間に降りてきて広く普及した、最も歴史のあるチーズと言われ、その誕生の地、取り囲む山々とは深いつながりを持つ土地の名前が「トーマ Toma」です。この名前は人々の歴史の中で、さらに他の地域の地名と結びついて呼ばれるようになりました。どれもがトーマ同様の製品でトーマから発想を得て作られた同型のチーズです。生産地域がピエモンテ州で大きく拡大されていったことから、「ピエモンンテ」という土地全体の伝統を尊重し、全てをひとまとめにして「トーマ・ピエモンテーゼ(ピエモンテのトーマ)」と呼ばれるようになったそうです。 トーマ・ピエモンテーゼの特徴はその伝統の生産方法により全乳で作るか、低脂肪乳で作るかで、異なった風味が味わえます。

ラスケーラ Raschera DOP
クーネオ県産地で、形は丸型か四角形ですが、最近は利便性を優先した小さな四角型のタイプが多く生産されています。Monregalese地方のMagliano Alpi村にある牧場の名前に由来しています。ラスケーラの歴史に関しては1400年代までさかのぼり文献が存在します。産地は、DOPの規則によればクーネオ県全域がその範囲として認められています。ラスケーラの中でも「ラスケーラ・ダルペッジョ」と呼ばれるものは、標高900m以上の高地で生産され熟成されたチーズです。ラスケーラは味が濃く辛いタイプのチーズですが、「ラスケーラ・ダルペッジョ」はアルプス高原の草っぽい特徴的な香りが特徴です。このラスケーラを使った料理はチーズフォンドデュやラスケーラ・リゾットがあります。

カステルマーニョ Castelmagno DOP
クオネ県が産地のハードタイプのチーズです。山の名前とその山頂に立つ教会の名前が由来です。カステルマーニョはこの山の貴重な越冬食料として歴史的に作り続けられてきましたが、平地に暮らすようになるとカステルマーニョは徐々に生産されなくなり、「幻のチーズ」となりましたが、製造の許可が出たため、生産量はまた少しずつ増えてきましたが、2トン程度とDOPに認定されているチーズの中では最小です。
ハードタイプのチーズですが、独特の製法で作られ、原料の生乳は基本的に牛乳で、山羊や羊の生乳と混乳されることもあります。とろける舌触りと独特の風味が特徴でニョッキのソースにも使われます。